7月23日から約2週間、二十四節気の「大暑」です。大暑が過ぎたら立秋、一年の折り返しも近いですね。
大暑の頃はその名の通り、二十四節気の中でも一番暑さが厳しいとされる時期。三伏では中伏にあたりますし、夏の土用とも重なり、昔から養生の要の時期となっています。
猛暑と合わせて突然のゲリラ豪雨もあり、大気が不安定になりやすいですが、中医学では自然と人間は一つと考えるため自然界の変化が不安定な時は身体への影響も起こりやすいと考えます。
体力の消耗も激しくなる夏本番、
上手に暑さを乗りこなす養生のポイントや、旬の食材と薬膳の視点についてご紹介します。
大暑・夏の土用は胃腸を労わる
大暑の期間に「夏の土用」も重なっています。
「土用の丑の日」の土用は夏だけでなく四季の変わり目ごとにおかれていて、五行では「土」の気が割り当てられているので「土用」といいます。
中医学五行学説では「四季」+「土用」で五季
「土」は脾胃(胃腸)に関連する季節です。
季節の変わり目に不調がでやすい人や、食欲が落ちやすい人は脾胃が弱っている可能性は高いですし、ある程度健康な方でも土用のうちは胃腸を労っておくと気血が充実して次の季節の不調が防げます。
「土用の丑の日にうなぎ」という習わしはややマーケティング的な視点も挟まりますが(汗)
「暑さで消耗した脾胃を労り気血をチャージしよう」という点は昔からの養生のポイントです。
胃腸の働きが落ちるということは、気血(エネルギー)をつくる工場がストップするということなので
冷たいもので胃腸弱る➡気血つくれない➡食欲落ちる➡暑いし冷たいものしか食べれない…
という負の連鎖になると、どんどん夏バテがすすんでしまいます。
そうめんや冷やし麺はもちろん夏に恋しい食べ物ですが、栄養バランスが偏りやすく、脾胃も損傷しやすいです。タンパク質のとれるおかずや豚汁のような汁物をつけるなどの工夫をしてみましょう。
食欲がない時は、具が多めのお味噌汁や、参鶏湯のような骨ごと煮たスープと白いご飯を少しずつ食べましょう。
暑さに負けるず、夏に乗る養生の楽しみ
旬の食材や風物詩を楽しむ
大暑の時期は、体を冷やす作用のある旬の食材が自然と出回ります。
後ほど紹介するスイカやトマトのように、旬の食材は自然とその季節の養生となるというのは、薬膳のおもしろいところです。
「暑い暑い、疲れたね~」と言いながら頬張るスイカ、ゴーヤチャンプル、冷やしトマト、きゅうりのお漬物、どれもこの時期のごちそうですね。
かき氷やあんみつ、水ようかんも楽しみの一つです。
暑いと普通にしていても熱がのぼってイライラとしやすく、この後にも記載しますが、口数も増え余計にエネルギーを消耗してしまうと古くから記されています。意識的に心を落ち着けることも大切です。時折感じる日陰や路地の涼しい風のように、暑さの中でも楽しみをみつけて涼やかに過ごす気持ちをもちましょう。
巡りをよくして汗を適度にかく
『黄帝内経』素問・生気通天論には
因于暑,汗,煩則喘喝,靜則多言
意訳:暑さの影響を受けると汗が出て、胸がざわつくと喘ぐように呼吸し、静かにしていても口数が多くなる
というような記載があります。
人間の体には、暑さを汗で発散する機能が本来備わっています。
涼しいところでもダラダラとかきすぎるのは熱中症の恐れもあり危険な状態なこともありますが、暑いところで汗をかくこと自体はごく自然な生理現象です。
汗は女性にとっても男性にとってもデリケートな話題ですよね。ドラッグストアのデオドラント用品コーナーも年々増えているように感じます。
エチケットとしてケアはしつつも、自然な発汗そのものは無理にとめない方が身体にとっては楽なことなんです。
また、汗がべたつく、匂う、という場合は、体内に余分なものが多い場合があります。
中医学的にいうと、痰湿や湿熱といって、水分代謝が悪く粘っこくなっていて、時に熱のこもりを伴っている状態です。
当然、脂っこい食事は控えた方がよいですが、それだけでなく、しっかりと巡りをよくして余分なものが排出できるようにすることも大切です。
サラサラとした気持ちの良い汗をめざしましょう。
オフィスなど冷房のよく効いた室内に長時間いると、この発汗機能が鈍り毛穴の開閉がうまくできないために、体表は冷たいけれど熱はこもりやすくなる場合もあります。
夜は冷房をかけて眠ったほうが睡眠の質は安定しますが、朝夕は少し換気を兼ねて窓を開けたり、涼しい時間帯に歩いて軽く汗をかく習慣を意識的につくったりすることも、夏の養生のひとつです。
夏の上手な一休みは?
汗も大事とはいえ、日中の炎天下ですでに疲労を感じているときに無理に動いて汗をかいたり、貧血や乾燥傾向の人がサウナを習慣にするのは逆効果になりかねません。
酷暑が続いてご存知の方も多い話だと思いますが、汗は単純な水分ではありません。
汗の原料は血液(血)なので、過度の損傷は貧血や失神へとつながります。
また、中医学的には汗には「気」エネルギーも含まれているため、汗の消耗=エネルギーの消耗となります。
どんな風に疲労を癒すか?
中医学には2時間ごとに臓腑に気血が充実するサイクルが決まっている「子午流注」の考えがあります。

特に暑くなる11時〜13時が夏の臓器「心」の時間です。
この時間には屋内でゆっくり過ごし、出来れば昼食後は10分程度の短い昼寝をとります。
「心」のあとは⇨「小腸」⇨「膀胱」と気血が流れていくので、「心」にこもった熱が尿として排泄されやすくなります。
疲れ方を観察しながら過ごすことも大切
重だるさを感じる日は、身体の中で余分な水分などが滞っているので、少し運動したり、お風呂につかり汗をかいて発散する。
ぐったりした消耗感が強い日は、気血が消耗しているサインなのでこまめに休息し、夜は早めに眠る。食事は消化に良いものを食べる。
自分の疲れ方や、汗のかき方を観察して、発汗と休養を上手に使い分けてくださいね。
運動が苦手だったり、時間をつくることが難しい場合、お風呂をうまく使いましょう。
冷えを残さない半身浴
「ただでさえ暑いのに湯船なんて無理」と、思う方も多いかもしれませんが、夏場のお風呂で身体が楽になることも多いですよ。
夏は「心」に負担がかかりやすいので、心臓よりも低い位置までの半身浴で、炭酸系の入浴剤でスッキリとあたたまるのがオススメです。
暑さに負けていると呼吸も速く浅くなってしまっていることも多いので、好きな香りの入浴剤を使って深く呼吸をし、リラックスしましょう。睡眠の質も向上します。
お湯に浸かることで、冷房の冷えによる滞りも解消し、皮膚のキメや汗腺の働きも整いやすくなります。

旬の食材と薬膳的解説
スイカ
五味は「甘」
四性は「寒」
帰経は「心」「胃」「膀胱」
清熱・除煩・生津・利尿の働きがあり、「天然の白虎湯」(熱冷ましの代表的な漢方)とも呼ばれるほど、暑気払いの力強い味方です。
梅雨明け後から毎日食べても良いとされるくらい、この時期にぴったりの果物です。
体を冷やす力が強いので、冷え性の方は食べすぎに注意し、常温に近い状態でいただくのが良いでしょう。
トマト
五味は「甘」「酸」
四性は「微寒(涼)」
帰経は「肝」「脾」「胃」
清熱生津、健胃消食の働きがあり、体と喉の潤いを補いながら、血分(身体の深いところ)の熱を冷ましてくれます。
外出先で頭がぼーっとするほどの暑さと疲れを感じたときは、一先ずトマトジュースでクールダウンを。
酸味には収斂作用もあるため、汗のかきすぎで消耗しやすいこの時期、失われた潤いを引き戻す食材としても優秀です。
やはり冷やす力が強いので、冷えやすい方はスープなど熱を加えると作用が穏やかになります。
うなぎと穴子
うなぎ
五味は「甘」
四性は「温」
帰経は「肝」「脾」「腎」
穴子
五味は「甘」
四性は「平」
帰経は「脾」「腎」
どちらも補気養血、補腎の働きを持つ滋養食材ですが、うなぎは体を温める力がやや強く、穴子はより穏やかな性質です。
体質的に熱がこもりやすい方は穴子を選ぶと、より養生の目的に合いやすくなります。
添えられる山椒は胃の働きを、奈良漬は脾の働きを助けます。消化吸収のためにぜひ一緒に頂きましょう!
夏を乗りこなす大暑の養生まとめ
大暑は、暑さがもっとも厳しくなる一方で、暦の上ではすでに秋への折り返しが始まっている時期でもあります。
路地からの風
川の飛沫
あんみつ スイカ 宇治金時氷…
暑い中でふと感じる「涼」を楽しみの一つとして過ごしてみると、違った気持ちで過ごせるかもしれません。
暑さで「心」や頭に熱がこもりやすく、イライラしやすくなるのも自然の流れです。
清心して、
心地良い、嬉しい、楽しいという気持ちを忘れずに。
「発散すべき時は発散する」
「休むべき時は休む」
「土用は脾胃をいたわる」
この3つを意識して、体力の配分を工夫し、大暑を乗りこなしていきましょう。

